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途上国が抱えるトイレ不足・非衛生的トイレという問題~ハード面からの解決案~

 2014年2月10日



世界を変えるトイレプロジェクト

世界を変えるトイレプロジェクト(http://www.waterforum.jp/toilet-project/)


みなさんは「世界トイレの日」を知っていますか?2013年7月に国連にて制定されたもので、11月19日は世界トイレの日なんです。提案者は世界トイレ機関(World Toilet Organization)で、創設者であるジャック・シム氏はThe Toilet Manと呼ばれているのだとか。

「○○の日」を探してみると実は色々と制定されているわけですが、トイレの日が制定されるほどなのでもちろんトイレの問題は非常に大きく、途上国を中心に世界人口の3分の1以上(約25億人)が衛生的なトイレのない生活を送り、11億人が野外で排泄している、また、6.7億人が安全な水を飲めておらず下痢や脱水などが原因で毎日約2,000人の子供たちが死亡しているとされています。その他トイレがないことによる問題は、世界トイレの日プロジェクトに詳しいのでぜひご覧いただければと思います。

途上国の非衛生的なトイレ事情

途上国のトイレ事情(http://let-us-know-africa.blogspot.jp/2010/04/bop.html)

途上国のトイレ事情(http://let-us-know-africa.blogspot.jp/2010/04/bop.html)


トイレがないという地域も多々ありますが、トイレがある地域でも問題があります。現状普及しているトイレの様式としてはピット・ラトリン(pit latrines)、要はボットン便所が一般的です。ピット・ラトリンは下記のような問題を持っており、改善が必要です。

  • 誰もトイレに溜まった排泄物を処理しないため、一杯になったら新しいものを作るというのが現状
  • 雨が降った時に便所が溢れかえり、水源が汚染される
  • 囲いすらもないピット・ラトリンの場合、特に夜に女性がトイレに行くにはレイプなどの危険がつきまとう

その他のトイレの形としては、ナイロビのフライング・トイレットなどが有名ですが、要は衛生的なトイレ環境が整備されていないと地域が途上国には非常に多いということです(念のために書いておきますが、都市部にはきれいな建物(衛生的なトイレ環境)がたくさんあります。途上国の全地域においてトイレ環境が非衛生的であると言っているわけではありません)。

途上国におけるトイレ問題を解決に向けた問題点と適正技術

途上国に衛生的なトイレを普及にあたって大きな問題は、『上下水道が整備されていないため水を使えない』ということです。このようなハード面の問題を解決しようとするためには、途上国の事情を加味する必要があります。それが適正技術という考え方です。詳しくは適正技術について書いている「技術とビジネスを用いた新しい開発援助の方法 ~技術の力で途上国の課題を解決する~|STONE」をご覧いただくとして、水が使えないという問題を解決する適正技術にはどうのようなものがあるのでしょうか?

途上国トイレ問題を解決するエコサン・トイレという技術

現状、広く採用されているのが、エコ・サニテーション(エコサン)という考え方・技術です。エコサニテーションとは ecological sanitation (環境にした公衆衛生)のことで、糞尿を再利用しながら公衆衛生を向上させていこうという取り組みです。世界銀行は下記のように定義しています。

  • 汚染をコントロールする試みではなく、汚染そのものを防ごうと志向する
  • 尿や糞便を再利用する
  • 農作業に対して悪影響を与えない製品である

排泄物を肥料などとして再利用するという処理方法は大昔から行われていることで、紀元前5世紀の中国ではすでに肥料として使われていたようです。日本は、世界でも類の無いバキューム車による屎尿回収、屎尿処理施設で都市の非衛生状態を改善してきたそうで、太平洋戦争が終わるまで、日本の全土において屎尿を回収し、完全な窒素、リン、カリ、有機物循環系を実施していたのだとか。現在の日本でも自然の中の公衆トイレなどにはエコサントイレが多数導入されています。

途上国では先述の適正技術の考え方に従い、現地で入手できる素材で、低価格で、メンテナンスも簡易なエコサントイレを個別に導入する、あるいは、助成金などを受けて学校などのコミュニティにエコサントイレ導入するという活動が10年以上前から行われています。しかしながら、実際には、『上下水道が整備されていないために水が使えない』という問題以外に多くの問題が存在することがわかってきました。下記問題を解決できるような技術はあるのでしょうか?

  • エコサントイレは一般的に価格が高い
  • トイレの重要性を理解してもらえない
  • すでにトイレがある人たちにはエコサントイレを導入するメリットを理解してもらいにくい
  • 排泄物に対する文化的な価値観(うんこに呪いがかけられるため、家にトイレを置くと家族から呪いをかけられると思ってしまう、など)
  • 時間の経過とともに不適切な使用やトイレ備品の破損による放置、し尿の資源利用がなされなくなるケースがある、など

ビル&メリンダ財団のトイレアイデアコンテンストがもたらす新しい解決案

そんな中、慈善財団であるビル・アンド・メリンダ財団が、衛生状態の改善を狙い「新たなトイレ」のアイデアを募るコンテストを開催しました。太陽エネルギーを利用したトイレを考案した米カリフォルニア工科大学が優勝し10万ドルの賞金が贈られると発表されたのが去年のことです。発明の募集は1年前に始まり、英国、カナダ、米国から参加した大学チームが受賞しました。優勝は太陽エネルギーを動力として水素ガスと電気を生み出すトイレを設計した米カリフォルニア工科大(California Institute of Technology)、2位は汚物をバイオ炭、ミネラル、浄水へと変えるトイレで英ラフバラ大学(Loughborough University)、3位は排泄物を消毒した上でミネラルや水を回収するトイレでカナダのトロント大学(University of Toronto)です。

実はこのアイデアコンテストは、上記エコサンとは違ったアプローチであることにお気づきでしょうか?それはエネルギーなどの新しいリソースを生み出しているということです。実はこのコンテストにおけるトイレの条件としては、水、電気、汚水処理システムがなくても稼働し、汚染物質を排出せず、できればエネルギーなどのリソースを生み出し、1日あたり5セントで稼働することが求められていたそうなんですね。エコサンはあくまで排泄物をどう無害なものにするか、というところにしか焦点を当てておりませんでしたが、これらのアイデアは電気を生み出したり、バイオ炭を生み出したりと、+1を加えているアイデアというわけです。エコサントイレにも太陽エネルギーを使ってコンポスト(肥料化)を促進させるなどの技術が搭載されているものもありますが、エネルギーを作り出すという点が新しく、『トイレの重要性を理解してもらえない』『すでにトイレがある人たちにはエコサントイレを導入するメリットを理解してもらいにくい』という課題を解決してくれるかもしれませんし、1日あたり5セントという価格設定も『エコサントイレは一般的に価格が高い』という課題を解決していくのではないかと考えられれます。

ハードの改善だけでは問題は完全に解決しない

しかしながら、『排泄物に対する文化的な価値観』の問題や『時間の経過とともに不適切な使用やトイレ備品の破損による放置、し尿の資源利用がなされなくなるケースがある』のようなメンテナンスの問題は、置き去りにされたままのように見えます。このようなソフト面もカバーした事例はあるのでしょうか?別途調べてみて、またの別の記事としてまとめてみたいと思います。

参考


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