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フェアトレード批判、フェアトレードの問題・デメリットについて考える(フェアトレードのおかしな真実を読んで)

 2013年12月16日



こんにちは、STONEオダです。
英治出版から出ているコナー・ウッドマン著フェアトレードのおかしな真実という本を読み終えました。フェアトレードと聞いてみなさんは何を思い浮かべるでしょうか?広義にはみなさん同じようなものを思い浮かべるかもしれませんが、狭義にはいくつかの種類に分かれており、商品によっても事情は大きく異なります。本著はこの世界で起きている貿易、グローバル経済に巻き込まれている途上国の真実を描いた本で、色々な種類のフェアトレードについてコナー・ウッドマン氏が取材した事実に基づくフェアトレード批判がまとめられています。

本書を読んで学んだことの中から本稿では、国際フェアトレードラベル認証に基づくフェアトレードの問題について抽出し、再度自分なりに調べた上で、国際フェアトレード認証ラベルの基準に準拠したフェアトレードがどうあるべきか考えました。


フェアトレードとは

フェアトレード・ラベル・ジャパンによるフェアトレードの定義は下記のとおりです。

フェアトレードとは直訳すると「公平な貿易」。つまり、開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す「貿易のしくみ」をいいます。

このフェアトレードによって届けられる商品を増やしていくべく、国際フェアトレード認証ラベルというものがあります。この国際フェアトレード認証ラベルを貼付されている商品は下記の観点が保証されているということになっています。

    生産者への適正な価格と長期的な取引

  • 不安定な市場価格に対して、フェアトレードでは持続可能な生産と生活に必要な価格(フェアトレード最低価格)を保証しています。
    また、生産者が債務のわなに陥ることがないよう、必要があれば代金は前払いされます。それにより生産者は安定した生活を営み、環境に配慮した持続可能な生産をすることができます。
  • 生産者の社会的・経済的な発展

  • 生産者が生産組合を作り、透明性のある民主的な活動を行います。商品代として別に渡される奨励金は生産組合に蓄えられ、学校や病院建設など地域の社会発展のために役立てられます。
  • 生産物の品質と技術の向上

  • 生産技術や生産管理などの指導が行われ、品質が輸出品質基準を満たします。有機栽培など、環境に配慮した作物づくりを奨励しています。
  • 生産者の労働環境と労働条件

  • 強制労働と児童労働を禁止し、安全な労働環境を作ります。労働者が管理者との団結交渉権をもっています。
  • 生産地の環境保全

  • 農薬の使用、水質保全、森林保全、土壌保全、廃棄物の扱いに関し国際規約を遵守しています。


フェアトレード保証の最低価格が国際価格よりも明らかに低いままである

■コナー・ウッドマンの主張
上記国際フェアトレード認証の基準には、『不安定な市場価格に対して、フェアトレードでは持続可能な生産と生活に必要な価格(フェアトレード最低価格)を保証しています。』とありました。しかしながら、実はこの最低価格が、ここ数年国際価格よりも低いらしいのです。著書に掲載されている限りにおいては、『国際フェアトレード認証が保証するカカオ最低価格は1トン1600ドルだが、2009年時点でのカカオ国際価格(ICCOによる)は1トン2939ドル。』と記載されています。本稿を書き始めた2013年11月21日時点でも、1トンあたり2821.74ドルとなっています。フェアトレード最低価格は改定されるものと記載されていながら、実際には国際価格の変動に関係なく一定なのではないか、という批判が展開されていました。

■調べてみての考察
しかしながら、カカオの豆の価格は2011年1月より1トン2000ドルに改定するとの発表がされておりました。どうやら最低価格の改定は行われているようです。どの程度の期間をもって改定に踏み切るのか、という点は一考の余地がありそうですが、カカオ豆に関して言うと、国際価格が1600ドルを明らかに超えて増加基調に入ったのが2007年からで、改定されたのが2011年で、改定が行われた2011年には3000ドルから2400ドルまで一気に減少していますから、国際価格変動にぴったりと合わせるのは難しいところだと感じます。そもそも価格が変動するから保証価格を設定しているわけですし。
カカオ豆国際価格推移


カカオ豆だけでは事例として不十分かと思い、コーヒー豆についても同様に調べてみたところ、コーヒー豆(アラビカ種 washed)は2011年4月1日より1ポンドあたり125USセント/ポンドから140USセント/ポンドに改定されていました。この件の著者の主張は考慮せずとも良さそうです。
コーヒー豆の国際価格推移


国際フェアトレード認証ラベルは事前の通知なく外すことができる

■コナー・ウッドマンの主張
国際フェアトレード認証ラベルは事前の通知なく外すことができるそうです。現在は最低保証価格よりも国際価格の方が高いため問題はないが、今後国際価格が保証価格を大幅に下回った場合に、ラベルを外してしまう商品が急増するのではないか?と、著者は懸念しています。

■調べてみての考察
たらればの世界ですが、可能性としてはあり得るでしょう。カカオ豆もコーヒー豆も、2011年に価格が下落していますので、今後のフェアトレード市場がどうなるかが見ものかなと思います。


生産者組合としての取引しかできないことが末端農家を苦しめ、商品の質向上を妨げる

■コナー・ウッドマンの主張
フェアトレードの生産者の条件には『生産者は組合を作り、透明性のある民主的な活動を行う。 安全な労働環境、人権の尊重、人種差別・児童労働・強制労働の禁止などILO条約(国際労働条約)を守る。』とあるが、実際には生産組合内での搾取構造が存在し、末端の生産農家に適切なお金が支払われていないことがある、ということでした。
同様に、フェアトレード認証ラベルの基準には『生産物の品質と技術の向上』という項目がありますが、オレラの農家は赤ちゃんがおねしょしたようなボロ布の上で豆を乾かしていたという現地活動家との会話が本著には記載されています。豆は臭いを吸収しやすいので、そのような布で乾燥されたコーヒーは美味しくないそうです。

■調べてみての考察
フェアトレード認証団体が生産者に対して組合を組織するよう求めるのは、運営・管理のために仕方のないことだと思います。しかしながら、組合内での弊害についてはネット上で情報があまり取得できないため、考察できておりません。ですがネットに出てこない情報だからこそ、この批判には価値があると思います。

フェアトレードコーヒーの普及はエネルギーや炭素の無駄遣いに貢献している

これはコナー・ウッドマン主張というわけではなく記載されていた会話の中の発言です。フェアトレードを普及させようと思うと大手に卸さなければなりませんが、大手に卸すとなると大量の生産量が求められます。結果、小規模農家だけでなく大規模農家と契約を結ぶことになります。大規模農家は労働効率性を求めるため、大量の農薬を利用したり機械化したりと、面積あたりの生産性を向上させている小規模農家よりも無駄が多くなってしまいます。フェアトレード認証ラベルの基準の中には『生産地の環境保全』という項目が確かに存在しますが、フェアトレードでは重要度が低いということでしょう。

フェアトレードが広まれば広まるほど、フェアトレード商品の価格は下がるのだから、価格保証のためには生産量を減らすべきだ

フェアトレードの焦点であるコーヒー豆の価格変動については別の書籍において批判が展開されておりました。ジョセフ・ヒースという人が資本主義が嫌いな人のための経済学において、下記のような批判を展開しています。

■ジョセフ・ヒースの主張

  • フェアトレード運動がかなり活気づいたのは「2001年コーヒー危機」のさなか、世界市場での供給過剰からコーヒー豆の卸売価格が壊滅的に下落したときだった。
  • 問題の根本原因がコーヒーのあまりの生産過剰にあることは誰も否定しなかった。供給過剰の原因は、生産増のみならず、先進国でのコーヒー消費の激減にある。
  • 世界のニーズより1000万袋も多くコーヒーを生産しているなら、適切な解決法はそんなに多く生産するのをやめることだ。(存在しない西洋の消費者向けのコーヒー豆栽培に使われた土地と労働力は、本当に必要とされているもの、例えば食糧の生産に使うこともできたのだ。)。

■調べてみての考察
まず生産過剰によって価格が下落したのかを自分の目でも確認したいと思い、データを取ってきてグラフ化を試みました。しかしながら、生産過剰を示す数値が思いつかず、Ending stocksというデータを見つけた(リンク先5ページ目)のでグラフ化したのですが、あまり負の相関はありませんでした。

コーヒー豆とEnding stocks

そこでまた調べていたところ、コーヒー危機の原因とコーヒー収入の安定・向上策をめぐる神話と現実―国際コーヒー協定(ICA)とフェア・トレードを中心に―という素晴らしい文献を見つけました。この記事は供給過剰がコーヒー危機の要因であったと分析しています。

またこの文献によると、過去コーヒー豆市場は供給過剰による価格暴落を防ぐために、流通量が規制されていたそうで、1987年頃から下落し1991年頃まで続いたコーヒー豆価格の暴落はこの規制が終わったことによるそうです。

ICAとは、19世紀末から何度も繰り返されてきたコーヒーの供給過剰と価格暴落をうけて、1962年にスタートした国際商品協定の一種であり、具体的には、コーヒー生産国の輸出割り当てを課して国際市場に流通するコーヒー豆の量を人為的に制限することで、価格の低迷防止と安定化を図ることを目的とするものである。

また、1990年代末から2000年代初頭にかけての暴落はベトナムによるコーヒー豆の供給過剰が大きな理由だと言っています。

1990年代末から2005年にかけて、国際コーヒー価格は文字通り奈落の底に突き落とされた。2002年をボトムとするこの史上最低水準への暴落をもたらした最大の要因は、受容の減退ではなく供給の過剰であり、その主犯はコーヒーの新興生産国ベトナム、従犯はコーヒーの最大生産国ブラジルであった。

下記グラフを見る限り、ベトナムの供給量とコーヒー豆価格の下落には非常に大きな相関があったという意見には納得できます。
ベトナムコーヒー供給量とコーヒー豆の価格

逆にコーヒー豆の価格が上がるときは、霜害のあった年であったりするようなので、受給のバランスが価格に大きく影響することは間違いないと言えそうです。
コーヒー豆価格トレンドとイベント

ちなみに、カカオの価格が近年高騰していた理由は、コートジボワール内戦の激化により農家の数が激減(=供給量が減少)とヘッジファンドによる買い占めなどだそうです。


国際フェアトレード認証ラベルは結局良いのか悪いのか

以上のように一通り調べてみて、供給過剰による価格下落や組合制度の弊害が、フェアトレードにとって大きな問題であるということが見えてきました。価格下落については、このままコーヒーやカカオの生産を続けて良いのか?、また、大手に卸すがために大規模農家と取引をして供給量を増やす必要があるのか?という疑問が残ります。普通のコーヒー豆を生産して、「フェアトレードだから買って」というやり方では、最低保証価格があるとは言え、根本的な解決にはなっていないように見えるからです。

組合制度の弊害については、解決している実業家・活動家の事例が著書に載っていましたのでご紹介します。
たとえばEthical Addictions という会社は、すでに20以上の単一産地のコーヒーを、アフリカ、アジア、中南米から買い付け、販売しているそうです。彼らは国際フェアトレード認証を受けていませんが、1キロあたりわずか1.38ドルや1ドル以下しか受け取れていなかった農家に、1キロあたり4ドル(品質を改善するたえに豆挽き代として1キロあたり86セントが引かれる)を支払いました。これは当時の国際価格よりも高値です。

オレラ村の農家は、フェアトレード財団に登録しているキリマンジャロ・ネイティブ・コオペラティブ・ユニオン(KNCU)と言う組合を通してスターバックスなどに豆を売っていました。ここでも実際には組合内での搾取が蔓延していたわけですが、今はベンテという女性と共に独立組合を組織して豆を生産し、イギリスの小さな会社に販売しているそうです。フェアトレード認証ラベルに手数料を払い、大きな組合内で搾取されるよりも、フェアトレード認証がなくとも対価をしっかりともらえる仕組みを、農家が選んだというわけです。

そしてこのベンテという女性は、自分実施を一緒にコーヒー豆を栽培することで栽培における課題などを一緒に解決し、豆の選定方法や豆挽きの方法、得られたお金を品質向上のために投資する大切さを教えています。その結果、KNCUが1キロあたり1.38ドルで買っていたのに対し、1キロ3.14ドルで新しい買い手に売ることができたそうです。

以上から言えることは、『フェアトレードだから』という社会貢献欲訴求だけでは供給過剰の価格下落の煽りを受けやすく、フェアトレード認証ラベルがついていたとしても実際には搾取構造や生産性向上のための環境が未整備であったりする。独立系の小・中規模組合を組織して組合内の搾取のない構造や生産性向上のための環境整備を保証し、純粋な高品質商品としてニッチなところに高値で売ることがベターということでしょうか。

しかしながらこの話は、国際協力における国際機関と草の根NGO・NPOの関係と同じようなものだとも言えそうです。大規模な国際フェアトレード認証つきの商品と、フェアトレード認証では救いきれなかった地域を中小規模の別組織がサポートする、という組み合わせがフェアトレードにも必要なのかもしれません。

最後に、この著書の中では、大企業でもEthical Addicitionsやベンテのような活動ができるという証左として、オラムという会社のコートジボワールでの事例が取り上げられています。無利息融資、無料での肥料提供、生産品回収トラック、期限通りの支払い、前倒しの融資、肥料や牛などの生産性向上のためのトータルパッケージの提供、収穫高に対するインセンティブなどの施策を行っているそうです。このオラムのようなやり方が他の農作物サプライヤーでも適用できるのだとしたら・・・。もう少し調べてみたいと思います。


2014年2月15日(土)にフェアトレード界を代表する方々をゲストに、フェアトレードに対するもやもや・疑問を晴らすイベントを開催します。申込開始1周間で40名弱の申込がある人気イベントです。ご興味のある方はぜひ!→【イベント告知】フェアトレード従事者の頭の中~フェアトレードのウソ?ホント?



※現在STONEは発展途上国に関わるあらゆることについて学び考えたい人たちにとってのゼミ・ラボといった存在であるべく活動しています。毎週末、一つのテーマを取り上げて考え議論するような輪講を行っています。皆さんも考えたいテーマがあればぜひ気軽に持ち寄って一緒に議論をしましょう。興味のある方は、info[@]seize-stone.com または、twitter:@seize_stone 宛にお気軽にご連絡ください。

参考


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