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途上国の都市の水問題を解決したプノンペンの奇跡その1-飲める水道水と低い漏水率のすごさを検証する-

 2014年7月30日



プノンペンの奇跡という言葉をご存知でしょうか?カンボジアの首都であるプノンペンにあるプノンペン水道公社の浄水・配水する水道水は、2004年に「安全な水」として宣言されました。このプノンペンの水道水が、「直接飲むことができ、漏水率(無収水率)5.85%(2011年)というところ」まで改善されたことから、このように呼ばれているようです。

この話を知って以下のようなことに疑問を感じました。

  • 水道水を飲めるというのはどのくらいすごいのか?
  • 誰が、どのような理由で安全な水と宣言したのか?水質基準は?
  • 漏水率5.85%はどのくらいすごいのか?
  • 元々、プノンペンの水道事情はどうなっていたのか?
  • このプノンペンの奇跡はどのように達成されたのか?

本稿では上4つについて調べたことをまとめていきます。

水道水を飲めるというのはどのくらいすごいのか?

国土交通省が平成16年度に水白書の中で、国土交通省が引用しているデータによりますと、水道水を飲める国(都市)は13ヶ国+2都市です(いくつかは「そのまま飲めるが注意が必要」されています)。

  • アイスランド
  • アイルランド
  • オーストリア
  • クロアチア
  • スウェーデン(ストックホルム)
  • スロベニア
  • ドイツ
  • フィンランド
  • アラブ首長国連邦
  • 南アフリカ
  • モザンビーク
  • レソト
  • オーストラリア(シドニー)
  • ニュージーランド
  • ※うち、スウェーデンとオーストラリアの2カ国は一部の都市に限ったデータ

さて、「水道水 飲める国」などで検索をするとたくさんの記事が出てきます。2014年になって新しく作成された記事もその中にはありますが、そこでソース元とされている「国土交通省」が発表している「水道水が飲める国」に関する情報は上記でリンクを貼った平成16年の水資源に関する資料が最新で、しかもこの情報は当時の外務省の渡航情報ページに掲載されていたものであって、国土交通省が自ら調査を行った上で「飲める」と判断したものではありません(国土交通省水資源計画課に電話をして確認しました)。現時点で外務省のカンボジアページを見てみると「水道水を含め生水は飲まない」となっております。

以上より、しっかりと水質のすごさを検証するためには、市民が水道水を飲める国がどのくらいあるか?という視点での情報収集が必要になってきそうです。ですが、すみませんまだ調べきれていません。

誰が、どのような理由で安全な水と宣言したのか?水質基準は?

そうなると気になるのは「プノンペンの水道水(プノンペン水道公社の浄水・配水する水)は安全な水であると、誰が宣言したのか?」ですが、ざっと調べて見た限りでは情報が見つかりませんでした・・・。ごめんなさい。ただ、ベトナムのフエ水道公社もまた2009年に安全な水宣言がなされたそうで、Water Quality Asian Cooperation Networkさんの会報誌によるとフエ水道公社が「安全な水である」と宣言したようですので、プノンペンの場合もプノンペン水道公社がそのように宣言したということなのでしょう。

それでは、安全な水、飲める水道水の基準は各国・各年によって異なっているのでしょうか?わたしの調べた範囲では、全世界共通の明確な水道水の質に関する法的な基準はありません。敢えて言うのであればWHOのガイドラインが全世界共通のものでしょうか。厚生労働省(2002年)の水質基準に関するページを見るとWHOの飲料水水質ガイドラインは下記のようになっているようです(恐らくこの2002年が最新と思われます)。

【全ての飲用水】
 大腸菌もしくは糞便性大腸菌群:100mL中に検出されてはならない
【配水システムに送られる浄水】
 大腸菌もしくは糞便性大腸菌群 :100mL中に検出されてはならない
 大腸菌群 :100mL中に検出されてはならない
【配水システム中の浄水】
 大腸菌もしくは糞便性大腸菌群 :100mL中に検出されてはならない
 大腸菌群 :100mL中に検出されてはならない。大規模な水道システムで十分な試料が検査された場合には、12ヶ月間を通じて95%の試料中に検出されないこと。

日本水道協会という社団法人が2004年にWHOの飲料水水質ガイドラインを日本語訳して刊行出しているものも見つかりました。こちらはこの協会さんの許可なしには転載・複製ができないそうなので、特に引用はしません(というか、ガイドラインなのに転載・複製できない、というのは個人的に意味がよくわかりません)。

上の厚生労働省のリンクを開かれた方はお分かりかと思いますが、アメリカはアメリカの基準を、EUはEUの基準を持っているようです。もちろん、日本は日本の基準を持っているわけであります。個別具体的には異なる飲料水水質基準ですが、共通している枠組みは「微生物」「放射性物質」「化学物質」です。泥とか砂とか、そういう我々が汚い水と聞いて一番に思いつくものは見つかりませんでした。泥がある状態は微生物がいるという状態に含まれるのでしょうかね。

ということで、プノンペン(およびフエ)が何を基準に「安全な水」としたのかまだ謎ではありますが、市民の皆さんが水道水を飲んで何も病気になったりしていないのであれば、大丈夫なのでしょう。ということで、水質の良さの検証という点では「カンボジアの人々は飲めるけれども日本人の基準からすると飲めない」水質というところで一旦結論としたいと思います。

漏水率5.85%はどのくらいすごいのか?

さて次ですが、プノンペン水道公社が2011年時点で達成した5.85%の漏水率とはどれほどのものなのでしょうか。まず漏水率とは、家庭などへ配水される水量のうち、水道管から漏れる水量の割合のこと。古いデータしか手元になく恐縮ですが、2008年の時点のデータを御覧ください。

世界の水道における漏水率 「水の安全保障研究会」最終報告書 2008年7月

世界の水道における漏水率 「水の安全保障研究会」最終報告書 2008年7月


このデータによれば、プノンペンは東京とベルリンにつぐ漏水率の低さということになり、優れた配水が行われていると言って良いのではないでしょうか。

元々、プノンペンの水道事情はどうなっていたのか?

さてさて、現状のプノンペンの水道水事業が改善されたことはわかりました。それではこのような改善が行われる前はどのような状態だったのでしょうか?今回プノンペンの奇跡について調べるきっかけとなったダイアモンドに木村文さんという方が執筆された記事によりますと、下記のような状態だったそうです。

  • 改革前のプノンペンでは、この無収水率が72%にも及んだ。配水した水の7割以上の料金が徴収できていなかったのだ。
  • 当時、水道局は「電気代さえ払えない破産状態」だったという。職員は3割程度しか出勤せず、水道料金の徴収もいい加減で、集めた水道料金の一部が徴収担当者のポケットに入ることも珍しくなかった。

7割の料金を徴収できていない、職員が3割しか出社していないとは、さすがアジア、という感じでしょうか(ここでの無収水率は漏水率と同じ意味合いで使われていると思われます)。

##
以上、プノンペンの奇跡のすごさをざっくりとしてみました。では、このプノンペンの奇跡はどのようにして実現されたのでしょうか?この改革に関わってきた人々、その方法については次の記事にまとめたいと思います。

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