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”世界一高層のスラム” Davidタワーから考える、スラムを取り巻く問題とは何であるか

 2013年12月12日


途上国における過剰都市化とスラム – 貧民たちはどこに住んでいるのかのつづきです。

世界一高層のスラム

ベネズエラの首都カラカスに、世界一(背の)高いスラムと呼ばれるDavidタワーが在ります。90年代初めに、富裕層向けの超高層ビルの建設が始まりましたが、94年の金融危機により建設途中で頓挫しました。そのつくりかけのDavidタワーには、現在3000もの“不法占拠者”が住んでいるそうです。

興味深いことに、入居者たちの独自のルールによりDavidタワーは比較的平和が保たれています。電気は通っていますが、水道は5階までしか通っていないため、6階以上のひとは水を運ばなければなりません。エレベーターがないので階段を使う必要があるのですが、毎週日曜日に14〜60歳の男性が運ぶルールになっているようです。

入居者は、建物の所謂管理者に毎月4ポンド(約650円)を払っており、各階にはリーダーがいて、毎週ミーティングも行われるそうです。何か悪事を働いたひとは、罰として一週間電気が使えなくなるというルールが存在します。*1


世界でも治安の悪いカラカスという都市

ベネズエラは南米北部に位置する、連邦共和制社会主義国家です。名目GDPは381USドルで世界31位(2012年度)、実質経済成長率は5.63%で43位となっています。*2 1999年から亡くなる2013年3月まで政権をとった、ウゴ・チャベスは反米政策を押し進めた人物として有名です。

そのベネズエラの首都がカラカスです。カラカスは世界第三位の治安の悪さで、殺人事件発生率が東京の100倍、人口が517万人のカラカスでは年間6500人が殺人によって命を落としている計算になります。*3

地理的な側面を見てみると、カラカスはメキシコと似て盆地です。盆地であるために、大気汚染がたまりやすかったり、また家を建てられる土地が十分にないことが問題になっています。


Davidタワーは、スラムか?

スラムの話に戻りましょう。前回の記事で記述したように、スラムの定義が、
- 人口過密
- 貧困
- インフォーマル住宅
- 安全な水や下水設備へのアクセスの不十分さ
- 借地借家権の不安定

だとすれば、Davidタワーは、
- 人口過密△
- 貧困△(定義による)
- インフォーマル住宅◯
- 安全な水や下水設備へのアクセスの不十分さ△(ルール等もひっくるめて、比較的満たされている)
- 借地借家権の不安定△(インフォーマルなので不安定と言えば不安定だが、今のところ干渉されていない。)

となります。
少なくとも一般的なスラムのイメージである、犯罪、不衛生、人口過密といったことは完全には当てはまらなさそうです。
インフォーマル=スラムであるならば、もちろんスラムと言うことはできますね。


Davidタワーとその周辺の問題

Davidタワーがスラムであるにしろ、なかったにしろ、インフォーマルである限り、国としてそれを容認するわけにはいきません。住人たちにとっても住民票がないため福祉へのアクセスもできません。いくら安全とはいえ良いことだとは言えません。しかし実際には役人たちは見てみぬ振りをしています。

前回も書いた通り、

スラムに対する解決策は、スラムの住民たちをスラムでない住宅に住まわせ、住民権を与え、しっかりと法のもとに生活してもらうことです。しかしもちろんそれだけではダメで、手に職を付けてもらい、きちんと家賃を収めてもらう、すなわち自立してもらうことがゴールになります。

しかしこれには大変なコストがかかりますし、前回書いたように地球上のスラムの数、スラム人口の数を考えればそれがいかに気の遠くなる話かわかるでしょう。

もしかすると、このDavidタワーに限って言えば、比較的治安が悪くなく、住民の数も把握しやすいなどといった面から、「スラム対策」を施しやすい場所かもしれません。例えば、ここに住む人たちに住民権を与えるといったことです。しかし、もちろん、国としてDavidタワーだけを贔屓することはできません。同じような問題を抱えている場所には、同じように対処しなければならない、それもスラム対策を億劫にさせていることの一つかもしれません。

カラカスのスラム



土地がないという大きな問題

そしてこのカラカスに限って言えば、そもそも土地がないのです。上記のとおり、盆地で、住宅が人口に対して足りていない状況なのです。ですから、公営住宅を用意しようにも、それを建てる場所がないということです。私たちは、「埋め立て地をつくってはどうか」という安直な考えを思いつきました。しかし地図を見てみると、海と都市を隔てるように大きな山脈があり、この解決策は得策ではなさそうです。

また住宅が足りないことのもう一つの問題を見つけました。それは移民です。先に述べた、長期にわたってベネズエラで政権を握ったチャベス大統領は、上流階級に対しては「経済戦争」と称して、民間企業の国有化を押し進める一方、貧困層を手厚く保護する社会福祉の国家を目指しました。また賃金の基準が比較的高いこともあり、世界中から押し寄せた移民たちは観光ビザで入国しそのまま不法滞在を続けたのです。*4

”世界中から移民が流入する”福祉国家”ベネズエラ” – 現代ビジネス(2010)によれば、

なかでも、隣国コロンビアからの移民はのべ400万人に上るとみられている。また、中国人移民は5万人を超える。さらに最近では、レバノンやシリア、ヨルダンといった中東諸国からの移民が増えている。

とのことです。

自国の民に住む場所を与えようとするのであれば、まずは移民に対しての対策を考えなければならないかもしれません。


※現在STONEは発展途上国に関わるあらゆることについて学び考えたい人たちにとってのゼミ・ラボといった存在であるべく活動しています。毎週末、一つのテーマを取り上げて考え議論するような輪講を行っています。皆さんも考えたいテーマがあればぜひ気軽に持ち寄って一緒に議論をしましょう。興味のある方は、info[@]seize-stone.com または、twitter:@seize_stone 宛にお気軽にご連絡ください。


参考

*1 Caracas squatters in real Tower of David might not welcome Homeland’s Nicholas Brody

*2 世界の名目GDP(USドル)ランキング

*3 カラカス – Wikipedia

*4 世界中から移民が流入する”福祉国家”ベネズエラ

In Venezuela, a New Wave of Foreigners

Inside Caracas’ Tower of David, the World’s Tallest Slum

How An Abandoned Skyscraper Became ‘The World’s Tallest Slum’

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