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マイクロファイナンス批判~高い評価の裏側では?~

 2014年1月23日

こんにちは。
STONEの中村です。

今日の記事では、マイクロファイナンスについて取り上げてみたいと思います。

マイクロファイナンス(小規模金融) とは、貧しい人々に小口の融資や貯蓄などのサービスを提供し、彼らが零細事業の運営に役立て、自立し、貧困から脱出することを目指す金融サービスで、世界中で多くの貧困層の生活を改善させたとして非常に評価されています。グラミンバンクというマイクロファイナンス専門の銀行を創設し、マイクロファイナンスを世界に広めたムハマド・ユヌス博士は、その功績をたたえられ、2006年にノーベル平和賞を受賞しています。

しかし、本当にマイクロファイナンスは世間で言われているほど高い効果をあげているのでしょうか?私自身は過去、途上国へ何度も訪れる中で、日本で聞かれる評価とは一転異なり、非常に批判的な意見をよく耳にし、日本における評価とのトーンの差に驚きました。また2010年の記事ではありますが、Bloombergにおける「インドを襲うマイクロファイナンスの悲劇、借金苦で貧困層の自殺多発」は多くの反響を呼びました。

今回の記事では、論文や書籍をもとにマイクロファイナンスの違う側面に迫ってみたいと思います。

マイクロファイナンスの一般的評価~概要とその効果~

マイクロファイナンス(小規模金融) とは、貧しい人々に小口の融資や貯蓄などのサービスを提供し、彼らが零細事業の運営に役立て、自立し、貧困から脱出することを目指す金融サービスです。発展途上国では、企業における雇用機会が少ないため、労働者の半分以上は自営業かファミリービジネスで生計を立てており、不安定な生活を続けています。貧しい人々は、将来の備えや計画に対応するための、預金口座や保険サービスといった一般的な金融サービスへのアクセスがありません。マイクロファイナンスは、こういったニーズに応えます。マイクロファイナンスは、従来の開発援助にあるような慈善的なアプローチとは異なり、一人ひとりが自分の可能性を活かし、経済的な将来設計も立て自立した生活を営むことができるように支援するものです。

マイクロファイナンスの先駆けである、グラミン銀行の事例を紹介すると、

1976年のパイロットプログラムの始まりから、 バングラデシュ農村の各地で確実に会員を増やし、 高い返済率を保ち続け、2012年11月現在会員836万人で, そのうち女性メンバーの割合は96%, これまでの累積貸付額は約129億USドル, バングラデシュ全土の8万1368の村に2567の支店を有する巨大な組織となっており、これまで貧困から脱出したメンバーは全体の68%に上ると報告されています。

マイクロファイナンスが与える効果としては、経済的効果と社会的効果があると言われています。

まず経済効果としては、貧困層である借り手にとって、マイクロファイナンスがない場合には利用できなかった資金がマイクロファイナンスを通じて利用できるようになったことで、借り手の金融サービスへのアクセスが確保されるようになり、マイクロファイナンスによって得た資金を生産活動に使って収入を得ることで貯蓄をすれば、その金利収入による代替効果や所得効果を通じて、現在財と将来財のとの間で望ましい消費パターンを選ぶ余地が広がります。またマクロな視点での効果としては、貧困層がマイクロファイナンスを通じて得た融資資金を元手に生産活動を行うことで所得や貯蓄が生み出されるようになります。それは国民一人当たりの資本の低減が止まり、雇用創出や資本の蓄積を通じて経済成長や地域の再生・活性化につながることになります。

また社会的効果としては、マイクロファイナンスは、開発途上国では特に女性のエンパワーメント効果に効果があり、それまでの通常の金融サービスを享受できなかった社会的に排除されていた貧困層に自ら生きていく自信を取り戻し、コミュニティとの「つながり」や社会との「きずな」を呼び戻す、といったことが挙げられています。

マイクロファイナンスの抱える課題

しかし、「世界は貧困を食い物にしている」「研究論文 バングラデシュにおける大規模マイクロファイナンス機関の事業拡大と展望」「発展途上国の貧困削減に対するマイクロファイナンスの効果―批判と可能性について―」等の資料によると、マイクロファイナンスは、先述したような一般的な評価とは様子が異なり、以下のような問題が見られるようです。

  1. 儲かるビジネスとして、マイクロファイナンスという名をつけた高利貸しが存在しており、年率100%以上(グラミン銀行では年率20%)の利子負担を強いるところもある。またその背後にはマイクロファイナンスを行う機関に出資している投資家がいて、貧困層から富を吸い上げている。
  2. マイクロファイナンスによる融資が収入につながる事業ではなく、生活のための消費(冠婚葬祭における出費やTVなどの贅沢品の購入等)に使われていることがある。その結果、返済のために別のマイクロファイナンス機関からの融資を受けているという債務重複の状態が存在している
  3. マイクロファイナンス機関同士の間での、規制や情報共有がないため、高利貸しや債務重複の状態の改善が見込まれていない。
  4. 1.で述べたような投資家の存在により、マイクロファイナンスによる利益や利子収入が国外へ流出してしまい、地域での経済発展をもたらしていない

これらの問題についての詳細を、一部資料から抜粋します。

マイクロファイナンスは今や700億ドル産業であり、目の玉が飛び出るような利益を出している投資家やマイクロファイナンス機関もある。ところがこの産業が貧困をなくすという約束はちっとも実現していない。それどころか、(中略)多くのマイクロクレジット・プログラムは、社会的責任投資の機会の名をかりた略奪的な貸付詐欺にすぎない。

ローンは必ずと言っていいほど、生産のためのミシンや山羊ではなく、テレビや、似たような銀行からの別のローンの返済や、他の請求書の支払いや、一般的な消費のために使われる。ローンの恩恵はあっという間に消えるが、借金は残り、利子はただならぬスピードでたまっていき、顧客はたいてい返済のために他の場所で別のローンを組む。

ローンの利率は、さまざまな隠れた料金を全て考えあわせると、公にされているよりもかなり高い。年30%未満という利率は残念ながらめったになく、100%以上が一般的だ。メキシコのある有名なMFI(マイクロファイナンス機関(注:中村))は年率195%も請求する

このような状況に対して、マイクロファイナンスの発起人であるムハマド・ユヌス博士自身も、2011年に『ニューヨークタイムズ』紙において、「いつかマイクロクレジットの血を引く高利貸しが生まれるとは思いもしなかった。しかし現に生まれている。」と危惧を示しています。

もちろんマイクロファイナンスの全てが上記のような運用がなされているわけでなく、中には非常に良い運営がなされているところもあるかと思います。しかし、日本では非常に高い評価を受け、それがあたかもマイクロファイナンスの通説であると語られがちですが、一般的な通説をそのまま信じ込むのではなく、他の視点や評価がないか調べてみることも大事かと思います。マイクロファイナンスの実態について、もう少し深く調べていきたいと思います。


※現在STONEは発展途上国に関わるあらゆることについて学び考えたい人たちにとってのゼミ・ラボといった存在であるべく活動しています。毎週末、一つのテーマを取り上げて考え議論するような輪講を行っています。皆さんも考えたいテーマがあればぜひ気軽に持ち寄って一緒に議論をしましょう。興味のある方は、info[@]seize-stone.com または、twitter:@seize_stone 宛にお気軽にご連絡ください。

参考文献

  • 「研究論文 バングラデシュにおける大規模マイクロファイナンス機関の事業拡大と展望」アシフル・ラーマン、アシル・アハメッド他
  • 「発展途上国の貧困削減に対するマイクロファイナンスの効果―批判と可能性について―」勅藤瑠璃子

*写真はWikipediaより

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