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ナミビアの貧困村で行われたベーシック・インカム支給の実験について

 2012年3月1日

こんにちは。
先日ベーシック・インカムの勉強会に参加してきました。そこで、ベーシック・インカムが実験的に導入されているナミビアの村の話を聞いたので、ご紹介したいと思います。

ベーシック・インカムとは

みなさんはベーシック・インカムってご存知でしょうか。
提唱者の一人であるトニー・フィッツパトリックによれば、ベーッシックインカムとは

「毎週ないし毎月、すべての男性・女性・子供に対して、市民権に基づく個人の利益として、すなわち、職業上の地位、職歴、求職の医師、婚姻上の地位とは無関係に、無条件で支払わられる所得のこと」

とされています。

つまり、私の理解では、誰にでも生活するのに必要最低限のお金が支払われるということです。

※ここでは基本的に勉強会で聞いたことのみで話を組み立ていきます。
※細かい内容(財源や細かいやり方)や、それに関する議論はこの場では置いておきます。
※詳しい内容は検索するとたくさん出てきますので、気になるひとは調べてみてください。下に参考文献としてURLを記載します。


ベーシック・インカムを導入する実験地として選ばれた村

namibia-africa-map

さて、実際に施行するとなると様々な障壁に当たりそうなベーシック・インカムですが、その効力を確かめる場としてナミビアのある村が選ばれました。

Otjivero-Omitara村。人口は約1000人。首都から150キロ離れたところにある、もともと飢餓と貧困が蔓延した地域です。犯罪も非常に多く、隣の家の人さえ信用しない、そのため他人との交流もほぼ遮断されていました。

2008年、この村の住民として認められた人で、年金を貰っていない全てのひとに100ナミビアドル/月を支給するという社会的な実験が行われました。


結果

端的に結果を記します。

  • 人のものを取ったりする必要がなくなり犯罪が減った
  • 医者にかかれるようになった
  • 村人(様々なバックグラウンドの人たち)が“自主的に18人委員会を結成して、BIの使い道などを議論した。
  • 以前はお酒に依存してしまう人が多く、BIがアルコール依存症を増加させてしまうとの危惧があったが、アルコールの販売・購入を抑制する動きが生まれた。
  • 進学率は40%だったが、ほとんどの子供が学校に通うようになり、経済的理由でドロップアウトをする学生もほとんどいなくなった。
  • セックスワーカーが減った。女性が生きるために男性を頼る必要性が減った。
  • BI支給を元資金として商売を自分で始めるひとが増えた。
  • 全体として貧困世帯が減った。
  • つまり、BIが村人に一様に支給されたことで、貧困が減ったり、学校や病院へのアクセスが可能になっただけでなく、村人同士の交流が生まれ、自主的に話し合いを持ったり、商売を始めるひとが出てくるなど、良い連鎖が生まれたというのです。


    ベーシック・インカムが持つ可能性

    しかしこれはあくまで、2年という期限付きの実験。今村人たちは継続を呼びかけているそうです。
    おそらく読者の方には様々な疑問が浮かんでいることでしょう。おそらく実行を考えれば考えるほど、様々な壁をクリアしていかなければならないのは確かなのです。しかし、とりあえずのところそうした疑問は置いておいて、BIの可能性について考えてみましょう。

    まず、これはOtjivero-Omitara村に限ったことではないですが、彼らはなぜ貧困においやられたのでしょうか。多くの場合、それは彼ら自身の責任ではないはずです。例えば、植民地支配の歴史があり、民族や人種で優劣を決められ、優れた民族から最も遠ざかったものは知らぬまに荒れた僻地へと追いやられそこでの生活を余儀なくされたのです。都市へ出るにもその手段がなく、行ったとしても働き口がない。助け合うべき隣人をついには信用できなくなり、アルコールに溺れるその日暮らしの日々。

    この実験結果が示しているように、そこから抜け出すためには、少しのお金が必要だったのでしょう。これは、マイクロファイナンスと似ています。お金を返すか、返さないか。おそらく、ここでマイクロファイナンスを実施したとしても彼らはきちんとお金を返したでしょう。しかし、BIは利益追求の活動をあえて強要しません。その中でやりくりするもあり、稼ぎを得るために商売を始めるのもあり。そういう緩さがBIのポイントのようです。

    BIやマイクロファイナンスは八方塞がりの生活に希望の光を見出すひとつの突破口となりうるのでしょう。
    全く格差のない社会はきっとありえません。商売をする者としない者で差が生まれてしまうのは当然のことです。しかし、BIは商売をしない者にも、一応の生活の保証を与えます。そこがマイクロファイナンスとの大きな違いでしょうか。

    そしてもうひとつ興味深かったのは、BIをもらえない移住者に、BIの支給を受けたひとがお金を分け与えていたということです。以前は他人との交流すら阻まれたこの地で、富を独占することなく助け合いの精神が生まれたことは、BIの大きな功績でしょう。

    実験結果から、少なくともこの村では、「金を与えると怠惰になる」などのマイナス言説の多くは否定されたかに見えます。
    施行の難しさ、現在の経済トレンドとの折り合いの難しさはあるにせよ、自主的な努力が助長されたという点において、BIの可能性を感じます。


    最後に

    みなさんはどう思われたでしょうか。私はBI信者ではありませんが、この実験の話を聞いてひとつの可能性だと感じました。何度も言うように、実施には障壁は多そうですが、BIというひとつのテーマから、途上国の問題ひいては世界的な経済の問題などを考える良い材料となりそうです。下に簡単な参考URLを貼りますので、ぜひ自分自身で考えてみてください。

    参考

    ベーシック・インカム パイロットプロジェクト(実験詳細・結果)
    ベーシック・インカム実現を探る会
    最近、多くの著名人がベーシック・インカムについて各々の意見を述べていますので、興味があれば「ベーシックインカム」と検索してみてください!



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    One Comment »

    • Yoichi Shimada said:

      ベーシックインカムや貧困層・退役軍人などに条件無しで金銭を給付する試みはDesaiやHanlonといった学者も主張しています。
      下のURLはHanlonの論文ですが、モザンビークで行われた実験について言及しています。
      http://www.sarpn.org/documents/d0001316/P1558-Hanlon_Money-to-poor_2005.pdf
      一律で金銭を給付する、というのは中々面白い試みではありますが、なぜこのような思想やそれに基づいた施策が広まらないか、ということについてもう少しクリティカルに考える余地がありますね。
      ベーシックインカムの考えとマイクロファイナンスの発想は、前者が給付主体が何の差別もなく一律に給付するのに対し、後者は給付主体がスクリーニングを恣意的に行なっている点で、それぞれかなり異なります。
      前者の発想が少なくとも開発の世界でポピュラーになっているとは言い難いのは、そうした特性が給付する側にとってスクリーニングに伴う力関係を失わせるものであることを示唆するからではないかと個人的には思っております。
      (放って置くと何するかわからないからちゃんと制限付けて、自分達が見ておかないと、という発想に近いものですね。)

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