Home » 経済, 農業, 途上国の現状と問題

研究の現場から -農家にとっての土地への権利を考える その4-

 2014年4月22日


こんにちは、永島です。
4回にわたる連載も、今回が最後になります。最後のまとめとして、前回までのエントリをおさらいし、最後に今後の展望に触れていくことにします。

アフリカ 農業


連載第1回:途上国では農家は農地で何ができるのか -土地の権利とは-

土地の権利が必ずしも公的に認められているとは限らない低所得国において、農家が土地をどの程度自由に使えるのかという観点から、土地の権利性の強弱を考察しました。
政府や自治体が権利を保証していなくても、土着の制度や個人の意思で耕作や他人への譲渡ができれば、それを権利として考えることにしました。
その結果、人や地域、文化その他の要因により、同じ「農家」であっても権利の強弱にばらつきがあることも確認しました。


連載第2回:農家の生産性向上への取り組み -投資と権利の関係とは-

農家による生産性向上への取り組みを広く「投資」と位置づけ、「柵を作る」など簡単なことから「灌漑設備を設置する」など大規模なものまで多岐にわたることを解説しました。
その上で、権利が強固になることで農家の投資が促進される可能性を考え、assuarance effect、realizability effect、collateralization effect と表現される、土地の権利が投資を誘発する効果も考えました。
一方で、投資行動がすでに行われていたから権利が保障されるという逆の因果関係も考えられることを指摘し、権利と投資の関係を鶏と卵にたとえました。

さらに、どちらが先であろうと、権利も投資も相互に促進しあえばそれでいいではないか、という疑問に対し、それでもなおこの研究には意義があるのだと論じました。
それは、権利を公的に認めることは、投資の促進だけを目的にしているわけではなく、課税や所有権に関する制度の整備とも関連があり、一般に複数の問題を抱える経済後進国にとって、何が優先度の高い問題なのかを考える必要があるからでしたね。
つまり、今すぐに多大なお金と時間を使って土地の所有権の明確化を行うべきなのか、他の政策をより優先すべきなのか、あるいは行うにしてもどのような方法がよいのか検討しなければなりません。


連載第3回:理論と現実のギャップ -本当に権利は投資を促進するのか?-

そしていよいよ、第1回・第2回のお話が、果たして現実に機能するのか、それともただの机上の空論だったのか、データを用いて分析した内容をご紹介しました。
おそらく、連載の中でもっとも難しかったと思います。私の筆がよくないにもかかわらず、難解な文章にお付き合いいただいた皆様、ありがとうございました。

データ分析の結果からも、やはりなかなか現実世界というものは複雑にできているということがお分かりになったものと思います。
Benin(ベナン)のデータからは、ほとんど「権利→投資」の効果は見つからず、Burkina Faso(ブルキナ・ファソ)のデータでは逆に効果がありそうだという結論に至りました。
Ghana(ガーナ)においては、捜し求めていた「権利→投資」の関係も、具体的な投資行動によってばらつきがあること、また逆向きの因果関係「投資→権利」についてもその存在がありそうだという見解を指摘することになりました。


まとめ:今の研究において足りないもの、今後求められるもの

もう一度、なぜこの研究がアフリカ各地で行われるのかという点に立ち戻りましょう。
STONEの過去記事においても、ランド・グラブ(土地収奪などと訳される)という現象について論じています。
先祖代々暮らしてきた土地が、外国資本にタダ同然で買い叩かれ、農地を失い…という問題は、「ひどい」「ずるい」のように捉えられがちです。
もちろん、ある地域や一国の所有権制度に問題があるのだとすれば、なんらかの改善が行われなければなりません。

あるいは、農地の問題だけではなく、一般に低所得国は複数の問題を複合的に抱えています。
その一方で、他国の資金援助に頼るなど、予算には限界があります
だとすれば、土地の権利の(公的、または土着の)認可と保障を制度として今すぐに行う必要があるのか、ほかの問題に先に取り組むべきなのか、優先順位をつけることが必要です。

そうして何人もの研究者が取り組んだこの分野の研究ですが、芳しい成果はなかなか出ていないようです。
理由はいくつか考えられます。調査が行われる地域が狭かったり、逆にあまりに広範囲に及んで多種多様な文化や土着の制度が入り混じり、結果がよくわからなくなってしまうかもしれません。
同じ地域で何年にもわたって調査を繰り返し行って変化を観察することが必要かもしれず、データ分析の手法がより高度になる必要性もあるかもしれません。

そういった研究が進むことはもちろん今後求められます。しかし、その結果を待つ私たち一般人に求められることもあります
それは、少ない情報だけに依拠する怪しげな言論に過剰に反応せず、冷静に考える力を養うことです。
研究は簡単ではありませんし、時間もお金もかかります。その成果がどのようなものであれ、性急な判断を下すことは得策ではありません。
時と場合にもよりますが、一国の土地制度や所有権制度は多くの人の命や生活のかかった問題です。
感情に任せて行動するだけではなく、いつでも冷静な頭と熱いハートをもって、途上国の人々の生活や問題に目を向け続けてほしいと思います。



人気記事


Add Twitter!

Leave your response!

Add your comment below, or trackback from your own site. You can also subscribe to these comments via RSS.

Be nice. Keep it clean. Stay on topic. No spam.

Additional comments powered by BackType






協力:gakuvo
STONE イベント
   STONE ブログ
団体概要
   STONE Twitter
STONE お問合せ
HIKEGRAPH HIKEGRAPH


stone logo